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シャンソニア劇場から、心温まる [映画 le cinema]

ミュージカル映画、というべきでしょうか、それともシャンソン映画というべきでしょうか。邦題「幸せはシャンソニア劇場から」 原題”faubourg 36/Paris 36” 監督は、「コーラス」のジャック・ペラン。ちゃんと、映画パンフには、AFTER “LES CHORISTES” と書いてある。
舞台は、1936年、戦争やファシストの台頭と暗い影がしのびつつある、パリ“郊外”のある劇場。その劇場も経営難で閉じるしかない、そんな中、劇場を生活の場としてきた人たちの、劇場復活にかける情熱を、テンポ良く、そして、コミカルに、シャンソンを巧みに使って描いています。そして、劇人たちの人生それぞれも、36年に生きていく人たちのそれぞれの生活を巧みに描いています。
この映画は、普通に描いてしまうと暗い映画になりかねない映画です。しかし、音楽を通して、そして、コメディにしあげることで、その暗さを逆に明るく、観やすい映画になっています。
はたもすると、この映画はどこにでもある映画になりかねませんが、(ミュージカル映画は特にミュージカルという部分に力がいってしまう)ピゴワルとその息子ジョジョの絆の深さを映画の芯にすることで、ぶれない映画となっています。そして、しっかりとした音楽もそれを支えています。

反面、後半の舞台でのミュージカルシーンは、少し大げさ(La Mer)。それでもこの映画を許せて、心温まるのは、36年-45年当時のパリの一角の人たちをとても活き活きとと描いているからでしょう。

ピゴワルとジョジョの再会のシーンは不覚にも涙が出てしまいました。いい映画です。

ミュージカル映画はやっぱりサントラも欲しくなりますね!

映画「幸せはシャンソニア劇場から」オリジナル・サウンドトラック

映画「幸せはシャンソニア劇場から」オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2009/09/02
  • メディア: CD



↓輸入盤ですが、ちゃんと歌詞がすべて入っています!

Paris 36

Paris 36

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ume Imports
  • 発売日: 2009/03/17
  • メディア: CD



夏時間の庭 [映画 le cinema]

オルセー美術館20周年を記念して作製された映画。
なんとなく、オルセー美術館というのが頭の中にあって、スクリプト自体を考えると、「受け継ぐ」というのがキーワードといっていいのかと思うのですが、それににしても、少し冴えないのです。役者陣 特にピノシュなんかが出ているんだから、もう少しいい映画に作り上げれば、と思うのですが、残念な映画です。フランス映画なんだから、もう少し深くスクリプトを作り上げた映画であったなら、と思ってしまうのは、フランス映画への幻想でしょうか。フランス映画はこんなものではないはずです。シャンソニア劇場のほうが考えさせられたし、納得して観れたのは思い違いなんでしょうか。緑の中の家のイメージしか残っていません。

斜陽 [映画 le cinema]

太宰生誕100年である。「ヴィヨンの妻」は、エンターテイメント性を高めて作られており、非常に観やすい映画と思う。
太宰の代表作といってもいい、「斜陽」はどうだろうか。とても退廃的である。アート作品(映画)のようである。原作自体が退廃的であるから、といってしまえばそれまでだが、文字とセリフの混在とカメラワーク、音声の撮り方がさらにそうさせているのかもしれない。原作とは違って、現代的にアレンジされている。そこがヴィヨンの妻とは違っているところではあるが、その現代風のアレンジの何とも不安定さが、この映画の見所なのかもしれない。母の病名が結核からがんになるところはよいが、医師が突然がんと告知するところなんかは断片的である。そう、この映画は、断片の連続で成り立っている。断片と断片をつなぐのが、フェードアウトする映像であり、文字(言葉)なのだ。セリフは、他の映画に比べて少なく、音声も意図的であろうがクリアではなく、わざと反響された音である。映画という映像を見ていることをこちらに実感させる作り方なのだ。そして。90分前後である。たぶん、これ以上は観ていられない。詳しい展開は必要ないのだ。太宰の原作を知らなくとも、である。断片が断片をひきよせ、このような家族やその周辺は今や過去の存在だろう。
 しかしながら、最後のあたりは早急すぎる気がする。そこが惜しいところである。太宰の原作の範疇から出ようとして出れずにもがいている、そんな印象も受ける。斜陽というとうの昔の話を現代風にした結果が、これなのかもしれない。たまには、映像作品としての映画を観たいなら、こういう映画もよいのかもしれない。


斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1950/11
  • メディア: 文庫



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